・野球界に残る古い体質(理不尽な指導、体罰、罵声など)を早急に見直す必要がある
・子ども達が心身ともに成長していけるようなチームを増やす必要がある
チーム数の減少などの問題が存在します。
野球に携わる子ども達がより可能性を伸ばすきっかけになれば幸いです。
・第47回春季全国大会で優勝(2017年)
という結果を残されています。
目次
京葉ボーイズさんの練習を見学した印象について(JBS武蔵 河合)
練習を見学して感じたことは、
・チームの雰囲気がとにかくいい
・指導者と選手の信頼関係が厚く、意思疎通がとれている
・選手がのびのびプレーできている
というようなことです。
選手たちは真剣に取り組みながらも楽しんでプレーしているようでした。
また練習中にうまくできなくても指導者から責められないので、
次どうしたらうまくいくのかを試行錯誤できている様でした。
ひとつのプレーに思い切ってチャレンジできるような雰囲気がチーム全体に溢れていました。
バッティングもみんなフルスイングしていて、強い打球を飛ばしていたのが印象的でした。
野球理念について
ーーどういった理念のもとでチームを運営されていますか?
約9年前に代表の勝本から中学野球を見てくれないか?と声がかかりました。
いまの小中学生の野球には未だに体罰や罵声を浴びせたり、今後の野球界はどうなってしまうのか?と感じることが多かった。
子ども達が将来に渡って活躍できるようないい指導を自分達がする必要がある。
そして、全国の学童野球チームの指導の方向性を指し示したい。
実際、日本の野球は5年後や10年後にはメジャースポーツでは無くなり、マイナースポーツになるだろうと言われています。
子ども達の野球離れが顕著ですね。
そもそも野球チームの指導環境によっては、野球をやること自体がつまらなくなっている可能性もあります。
今後、野球人口低下を食い止め野球を底辺(小中学生)から盛り上げていく為にも、
「野球をやることは楽しいんだよ」という事を伝えていきたい。
子ども達に野球を楽しませながら、個々を成長させることでチーム力も自ずと上がってきます。
そして一番は、将来に渡って活躍できる人材を育てていきたいと思っています。
指導の特徴について
ーー京葉ボーイズの指導の特徴を教えてください。
指導者が陥りがちなのは、ただできていないことを指摘するだけの指導になっている場合が多いと感じます。
「こうするな!ああするな!」
「もっとこうしろ!」
じゃあどうすればできるようになるのか?
その解決策を提示できていないことが多いと感じます。
私は野球のすべての技術(捕・投・打・走)に関して、選手にしっかりと手本を見せます。
人は目で見たものは真似できたり理解しやすくなるので、手本を丁寧に見せることを重視しています。
口で言っただけでは、頭での理解しかできないので、必ず選手自身の感覚に落とし込めるようにすることが必要です。
そのためにひとつひとつ動作の手本を見せて、選手が動きを身につけられるように指導しています。
基本的に小中学生の指導では、
「基本動作」をしっかり身につけさせることを念頭においています。
そうすれば、
高校、大学、社会人になっても活躍できる選手に育つと思っています。
小学生のうちに身につけてほしい事とは?
ーー小学生チームの指導者が、小学生のうちに選手に伝えてほしいこと、身につけさせてほしいなと思うことなどはありますか?
まず小学校のうちに
「野球の楽しさ」
を教えてほしいですね。
野球が楽しくなるには基本動作をしっかり教えていって、段階的にうまくなっていく体験をすることが必要だと思います。
「捕れるようになった!」
「打てるようになった!」
「投げれるようになった!」
「できるようになった」
という成功体験を積み上げていく事で、ちゃんと取り組んでいけばできるようになるという感覚をつかんでほしいですね。
あとは、ひとつひとつの段階を褒めながら技術指導をしていくことが大切です。
子どもは嬉しくなって、野球にのめり込んでいきます。
ケガの対策について
ーーJBS武蔵では、肩・肘などを怪我してしまったというご相談をよく受けますが、ケガの対策で気をつけていることなどを教えてください。
京葉ボーイズでは専属のトレーナーと提携していて、専門家のアドバイスをいつでも受けれる体勢を整えています。
ケガの予防だったり痛みが出た時点ですぐに現状を把握して、対策をとることができるようにしています。
あとは、球数を制限しています。
100球以上は絶対投げさせないようにしていますね。
基本的には練習でも40球〜50球程度しか投げさせないようにしていますし、
大会でも70〜80球くらいを目処に交代させるようにしています。
その場で勝つためではなく、
その子の今後の人生を考えて指導することが大切だと思っています。
勝利至上主義vs選手を伸ばす指導
ーー京葉ボーイズは強いチームによくありがちな猛練習や長時間練習をしていないようですが、その辺りはどのような考えをお持ちですか?
「勝つ」っていうのは大事かもしれないですが、私はそんなに勝利主義ではないですね。
子ども達の個人のレベルが上がればチームのレベルは自然と上がっていくと思っています。
なので、いかにして個人のレベルを上げていくかを念頭に指導しています。
あとは、戦術や状況判断なども教えるようにしています。
試合での状況判断(守備の動き方、走塁や打席での役割・考え方など)をひとつひとつ丁寧に教えることで、チームとしての力も上がっていきます。
そうすれば、自ずと勝てるチームになっていくと感じています。
「関口監督流」選手との信頼関係の築き方とは?
ーー練習を拝見していて関口監督と選手との意思疎通がしっかり取れていて、選手も意見をはっきり言う場面が見られました。
選手との信頼関係を結ぶのに気をつけられていることなどありますか?
選手と接していて感じるのは、
「愛情と情熱があれば、選手は答えてくれるな」
ということですね。
指導者自身のやる気と楽しさによって、
子ども達は自ずとついてきてくれます。
また口で言うだけでなくて、実際に手本を見せながら技術を習得できるように指導することが大事だと思います。
監督できるの?って選手に言われて、プレーを見せれないとダメですね。
バッティング指導の考え方
ーー小中学生の打撃指導で「上から叩きなさい」「ゴロを打ちなさい」という指導がありますが、その辺りについてご意見をお願いします。
うちの野球は「ゴロを打つな」と指導しますね。
ライナー、フライのいい打球を打つように指導しています。
ボールを上から叩いたら切ってしまって、
ゴロになってしまうでしょ。
ボールに対して面でレベルスイングで打っていくことでライナーやフライのいい打球になるよ、と指導しています。
バッティングの基本理念は
「強く」「正確」に打つことです。
だからうちの選手はしっかり振れて、
長打も出やすい。
今は「フライ革命」なども流行っていますね。
私は10年くらい前からバッティングは
「強く」「正確に」「遠くに飛ばす」という考えのもと指導しています。
フライが打てないとホームランも出ないし、
長打もでないでしょ。
ゴロを打つ意識が強いと単打しか打てず、
エラーを誘うとかはありますが力のない打球になりやすいです。
ピッチャーはゴロを打たせて打ち取ろうと思っているので、ピッチャーの思い通りになってしまいますね。
もちろん場面によっては、右打ちしたりゴロを狙って打つ選択もあります。
でも基本的にはボールの軌道にフラットにバットを入れて、強く正確に遠くに飛ばすことが大事ですね。
野球離れについて
ーー野球プレーヤーの割合が年々減っていっている事が問題として上がりますが、その事についてご意見お願いします。
野球離れの原因として、まずは親御さんの負担が大きいことが挙げられますね。
野球は特に金銭面などの負担が大きいと思います。
ただ根本的には、
「子ども達が野球をやることがおもしろいと思えているのか?」
「野球チーム自体が、そもそも野球を楽しむ環境になっているのか?」
という問題があると思っています。
例えば、サッカーを例に取ると、
JFA公認指導者ライセンス制度を設けており、指導者は指導方法を学ぶ機会が設けられています。
子どもの年代別に必要な指導方法を学ぶことで、ケガの防止や成長段階に合わない指導が避けられます。
野球のような旧体質的な体罰や罵声を浴びせるなどの行為は、サッカー界ではほとんど聞きませんね。
野球界も指導者がきちんとした指導方法を学べる場を作る意味で、
「指導者ライセンス制度」を設けるべきだと思っています。
その上で子ども達の成長段階にあった適切な指導をすることでケガを予防し、彼らが野球を楽しめるようにしていく。
楽しくなれば子ども達は前のめりに野球に取り組むだろうし、
それが野球人口の増加にも繋がっていくと思います。
指導者は上から目線で教えるのではなく、
選手に目線を合わせてしっかりとコミュニケーションを取る必要があると思います。
また、保護者の方と協力し合うことで選手のサポート体勢をみんなで作ることが大切ですね。
実際「監督が偉い」「指導者の立場が選手より上」という考え方はもう古いです。
選手が野球を楽しく取り組めるようにサポートをするために周りの大人がいるという前提が必要だと思いますね。
なので、子ども達が「週末になって早く野球やりたいな」と思えていることが一番大事なのかなと思います。
怒鳴られてばっかりだったり、上から命令されてばっかりだったら、そうは思えないですよね。
個々の技術指導不足をどう対策しているのか?
ーー小中学生の野球チームで多いのが全体練習の時間がほとんどで個別での技術練習をやる時間が少ないチームが多いと聞きますが、その辺りはどのように対策されていますか?
京葉ボーイズでは平日は火、水、木曜に自由参加で練習をしています。
いま全体の選手数が90名程度いますが、基本的に毎回20名くらいが参加していますね。
そこでは、打ち込みなどで個々の技術力向上に励んでいます。
土日は全体練習がメインになりますが、全体でやっている最中でもなるべく個々に技術指導をしていますね。
守備だったら、ボールへの入り方や捕球の仕方などをアドバイスします。
それで、できたら褒めてあげる。
「できた」という実感を持たせるようにしていますね。
今後の目標
ーー最後に、今後の京葉ボーイズの目標を教えてください。
中学野球のナンバーワンはジャンアンツ・カップなので、そこで優勝して日本一になることが目標です。
その大会ではまだボーイズは日本一になっていないので、今年・来年が勝負になるかなと思っています。
そこで優勝することでメディアなどに取り上げられれば、
京葉ボーイズの指導理念が全国に伝わり、野球界を変えるきっかけになると思っています。
今回インタビューをして関口監督から一貫して感じたのは「子ども達に対する愛情」と「野球界を変えたいという情熱」でした。
京葉ボーイズは、今の時代にあった考え方で子ども達の可能性を伸ばす素晴らしいチームだと感じました。