【チームインタビュー】茨城県つくば市「春日学園少年野球クラブ」〜週に半日の練習でなぜここまで選手が育つのか?〜

こんにちは!
JBS武蔵の河合です。

昨今、野球界では子ども達の野球離れ酷使による怪我罵声や体罰などが問題となっています。

JBS武蔵ではこのような野球界の問題と感じる部分に対して、
子ども達が野球をやる環境がより良いものとなるように貢献していく活動をしています。

子ども達が野球を通して心身ともに成長し、
自信を持って社会を生き抜く力を身につけていってほしいというのが大きな願いです。

今回は、茨城県つくば市にある「春日学園少年野球クラブ」
という少年野球チームをご紹介していきます。

様々なユニークな取組みをされているチームですので、
実際にお話を聞いての感想も含めてご紹介していきます。

※動画で練習の風景コーチへのインタビューをまとめましたので、そちらも併せてご覧ください。

【春日学園少年野球クラブ】練習風景&コーチへのインタビュー

岡本嘉一代表へのインタビュー

チーム設立して6年目ということですが、立ち上げたきっかけ、当初大変だったことはありますか?

最初はチームに入ってきてくれた方にチーム理念を理解してもらうことがとても大変でした。

今までの少年野球界の常識・問題だと思う点を踏まえて理念を掲げた為、
中々その理念がわかってもらえずに苦労しました。

いまでは多くの方に理解をして頂きチーム運営が出来ていますが、
理念・考えがチームに浸透するのには時間がかかりましたね。

野球界では、罵声や体罰が問題となることもありますがどのようにお考えですか?

罵声指導で生み出されるものは何もありません。

それどころか成長期の子供の健全な心の発達に歪みを生じ

その歪みは後々まで影響する可能性すらあり、
将に百害あって一利なし、と考えています。

それなのに指導者が罵声指導に訴える理由は恐らく
罵声をだすことで指導したつもりになる」あるいは
どう指導していいのかわからないので罵声をだす」のどちらかなのでしょう。

そしてなぜそのような人が指導者になれるのかなどに関しては、
「春日ビジョン」に記載しているとおり指導者ライセンス制度が大きく関係してきます。

野球をやってきた方には大変失礼ですが、
野球がうまければ指導もできるという致命的な勘違いをしている方は山ほどいます。

そしてそれが長年の伝統となって、
今(跳ね返って)少年野球界の存亡の危機の元凶となってしまった状況が今の少年野球界の実態だと思います。

つまり日本の野球少年の大部分は「自称指導者」によって技術指導も練習内容の考案も、
また野球肘などの基本的なメディカルの知識すらない大人によって「支配的指導」をうけるという私からすれば不幸としかいいようのない状態となっています。

春日学園少年野球クラブでは罵声指導を一切禁じています

それが可能なのは上記のように、指導の専門家(筑波大学コーチング学)が主となって指導しているからです。

そしてそれは今では完全に浸透しています。
もちろん厳しく指導することはありますが、罵声とは質の異なるものです。

私は一日でも早く少年野球界から「罵声指導」が消えてなくなってほしいと切に願います。

そしてこれがなくなるだけでも少年野球人気が復活する可能性が高くなると思います。

そしてそれほどこの「罵声指導」は罪深い、と考えています。

一般的な少年野球チームは父母会があり、当番制があるチームが多いですがどのようにお考えですか?

当クラブには父母会は存在しません。
特に運営目標として可能な限り母親の負担を最小限にすることを掲げています。

厳密にいえば、現在母親の当番は2つあります。

1. 夏季の熱中症見守り当番:
最近の夏場の気温は我々の幼少期と比べられないくらいの猛暑です。

これに対して選手は小1も含まれますので、クラブの安全対策として熱中症見守り当番を行っております。

これは「母親(または練習を補助している父親でも可能です)が練習中に気分の悪くなった子を一時的に介抱し、すぐその選手の父兄に連絡をして迎えに来てもらう」という当番です。

2. 大会時における審判へのお茶だし当番:
他チームと関連する時はある程度、地域で活動している少年野球の伝統は守らなければなりません。
これは試合中に審判に母親がお茶を運んでいくというものです。

従って1は父親が代行可能な為、この2のみが当クラブでの母親限定の義務となります。

逆にいつの間にか母親たちが気を遣い合って母親間で仕事を作ってしまったケースが過去にありました。

一方我々のチームでは父親の練習補助は積極的にお願いしています。
※野球経験は全く問いません

ただでさえ、日常から家事などの時間をとられている母親の負担を極力減らすことがチーム運営では必要だと考えています。

親御さんが子どもを安心して預けられ、子どもたちが成長していく場を提供したいと考えています。

昨今、勝利至上主義について議論されますが、どのようにお考えですか?

われわれは勝利至上主義に真っ向から反対する立場です。
勝利至上主義とは勝つためにエースが何百球と投げることです。

もし怪我していても強行して出場させることです。

つまり究極的にはその場でどうなってもいいから後先かまわず目前の試合を勝ちに行くというのが勝利至上主義です。

我々のクラブ目標は可能な限り故障させることなく上達させて中学野球に選手を送り出すことですので、当然このような考え方とは間逆の考えとなります。

しかし勝ちに行く姿勢は大いに奨励しています。

というよりチームで活動している以上常に勝利を目指すことは当然のことと考えており、大会ではひとつでも上を目指して戦っています。

ただ我々の目指す方向は上記とは似て全く非なるものです。
あくまでもクラブが決めたルールの上で勝ちに行く、ということです。

そのわかりやすい例が球数制限です。

我々のチームは球数制限がきたら、たとえ大会の決勝で接戦をしていようともエースを交代させます

更に言えば、チーム内ではシビアに競争ポジション争い)をさせます。
力がなければ大会に出場することはできません。

選手選抜は大学コーチが私情を挟まず実力で、かつフェアにメンバーを選抜します。

我々の子供世代はAI 時代という我々すら全く予想もつかない時代を生きていくことになります。

私はこのような中で生きぬくために重要なのは「心の知能指数(EQ)」だと考えています。

そしてこれは色々な競争から揉まれて、学び育まれて行くものと思っています。

人生に勝負はつきものです。

これを避けて生きて行くことは残念ながら不可能です。
というより私は人生(大小の)競争の連続だ、とも考えています。

子供たちは勝ったり負けたりし喜びや悔しさを経験し、そのみずみずしい心で一歩一歩消化して行くことによって精神的にたくましくなっていくと私は考えています。

特に負けたときにどのように心を整理するのか
子供自身で消化させるのが難しければ親御さんと乗り越えるのもよいでしょう。

そうした心の強さは、EQの高さの基本になるものだと私は考えています。
そのためにも「フェアに競争させる」ことを重要視しています。

佐治大志コーチインタビュー

画像をクリック(スマートフォンはタップ)するとインタビュー動画視聴できます!↑

春日学園少年野球クラブで指導をするに至ったきっかけについて

筑波大学大学院で野球コーチングの研究室でコーチングを学んで来ました。

その研究室では春日学園少年野球クラブへコーチを派遣しているとのことだったので、手を挙げました。

小中学生の指導に興味があり、これまで指導に携わって来ました。

選手との信頼関係の築き方について

積極的に選手とコミュニーケーションを取るように心がけています。

ウォーミングアップやそれ以外の時間でも野球に関わらず日常的な色々な話をするようにしています。

また野球では具体的に子どもたちの成長した部分をしっかり見て、評価してあげるようにしています。

そうすることで子ども達が彼ら自身の成長を実感してもらい、自信をつけることに繋がってほしいと思っています。

野球指導で意識していること

小学生の段階としては多くのチームでは組織プレーをすると勝ちやすいですが、
うちのチームでは基礎的な打つ、捕る、投げるを上達するような指導を心がけています。

また、練習後に振り返り(シェア)の時間を持つことで、
一人の選手が経験したことがその他の選手の学びになるので非常に有効だと感じています。

試合でのノーサインについて

試合はノーサイン、ノーバンドで行っています。

この目的は小学生の段階では主に「打って、走って、守って」という3つを伸ばす事が大事だと考えるからです。

またノーサインで行うメリットとしては、選手自身が自ら考えながらプレーすることにも繋がります。

例えば場面によっては自らの意思で盗塁する子が出てきたり、セーフティーバントを狙ったりする子もいます。

自ら考え、判断し、行動に移すことで主体性を磨いていけるプロセスを作れていることもノーサインで行うメリットだと思います。

ケガ予防の取組み(球数制限について)

1試合で6年生は70球未満、5年生は60球未満、4年生以下は50球未満という球数制限を設けています。

これは大前提のルールとして設定しています。

普段の練習から全員が投球練習をして、誰でもピッチャーができるようにしています。

そうでないと、大会の時にダブルヘッダーなどの時にはピッチャー不足で試合が成り立たなくなってしまいます。

週末1/4ルールについて

多くの少年野球チームでは、土曜の午前午後、日曜の午前午後の4/4を練習や試合に当てているのが現状です。

うちのチームではこの4コマの内、1コマ(例えば土曜の午前のみ)しか練習を入れないようにしています。
※対外試合が入る場合は土曜午前練習、日曜1試合と続くこともあります。

この1/4ルールをしている目的としては、
小学生の頃の燃え尽き症候群(バーンアウト)を予防することや保護者の負担を減らすことがあります。

野球をやり過ぎてしまい、もうやりたくないと感じてしまう子どもを作らない為にも、
腹六分目」くらいでチームでの練習は終え、
「もっとやりたい!」という気持ちを持ち続けてもらう事が重要だと思っています。
※動画上では「腹八分目」と言っていますが、多くのチームではそれでもまだ多いくらいです。

野球をやることに対する物足りなさ、枯渇感があるくらいの状態でチームの練習を終えることで、子ども達のもっとやりたい!というモチベーションが保たれます。

また野球だけで週末が埋め尽くされないので、
週末の家族の時間が持てたり他の習い事をする子も多いです。

ただし他の日に各自が練習する分は制限していませんし、
そうやって自分で主体的に取り組んだ方が効果も高いと思います。

だから子ども達にはチームの練習は発表の場だと思ってやってほしいと伝えています。

真剣にやりながらも楽しむ秘訣とは?

体罰や罵声は絶対ダメだと思いますが、
真剣に取り組むための規律を保つことや安全を確保するために叱ることはします。

ただそこまで大声を出したり、怒鳴る必要はないと思います。

しっかりと子ども達と対話していけば信頼関係ができるので、
強く言う必要もあまりないと感じます。

練習を見ての感想(河合)

画像をクリック(スマートフォンはタップ)すると練習動画視聴できます!↑

コーチと選手との距離が遠く選手に対して一方的な声かけのチームが多い一方、春日学園少年野球クラブではコーチと選手の距離が近くコミュニケーションがしっかり取れていました

子ども達もコーチに意見が言いやすい雰囲気があり、
主体的に練習に取組み楽しんでいる様子でした。
また、子ども達の笑顔が多く見られたことも印象的でした。

アップの時から大きな声で楽しんで体を動かしていて、練習のスタートから笑顔が溢れていました。

コーチが子ども達が主体的に取り組めるように環境や雰囲気を作り、
子ども達の良い部分(取組みの姿勢)に焦点を当てて声かけをしているからこそ、
このような良い雰囲気や子ども達の笑顔に繋がっているのだと感じました。

まとめ

今回見学して感じたことは、春日学園少年野球クラブでは子ども達の次のステージを見据えて指導をしているという点です。

怪我を予防しながらも必要な技術を習得させられるような練習内容であったり、子ども達が自分の頭で考えて学んでいけるような声かけミーティングをする場面が多くありました。

春日学園少年野球クラブのような子ども達がのびのびと野球を楽しみながらもたくましく成長していけるようなチームが増えていったら少年野球も栄えていくのではないかと思いました。

春日学園少年野球クラブについて

・春日学園少年野球クラブ【Youtubeチャンネル】

春日学園少年野球クラブで実際に行われている練習を紹介しているYoutubeチャンネルです。
筑波大学大学院のコーチング学を取り入れた練習メニューをぜひ御覧ください。

・春日学園少年野球クラブ【ブログ】

ブログでは春日学園少年野球クラブの理念やチーム方針、活動を報告するブログなども見ることができます。

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