こんにちは!
少年野球のバッティング指導や中学野球のバッティング指導
ではよく指導される事の一つに、
「叩いてゴロを打て」という事があります。
私も少年野球時代に「叩いてゴロを打て」という事を
コーチから指導された事を記憶しています。
少年野球のバッティング指導の常識となっている
「叩いてゴロを打て〜何かあるぞ〜」
指導者ならば一度はこのフレーズで
バッティング指導や練習を行った事が
あるのではないでしょうか。
それに付随して、
「上から叩け」「フライは上げるな」
などと指導される方も多いと思います。
しかし、これは本当の所正しいのでしょうか。
私たちなりの考えを書いていきたいと思います。
少年野球・中学野球のバッティング指導は正しいのか?
目次
少年野球バッティング指導で「叩いてゴロを打て」が指示される理由
言わばバッティングの基本とも言うような
「叩いてゴロを打て」
これは主に下記の様な理由からだと思います。
① 「叩く」という事が強い打球を生む
② 「叩く」事でゴロを打ち、守備側のエラーを誘う
③ 同じく送球エラーを誘う
という所でしょうか。
私はこの3つを主な理由として指導されてきました。
正直申し上げますと、
過去社会人までやってきた経験と
その後指導者として活動した中で言える事は、
上記3つはすべて間違っているという事です。
バッティングの基本は「ゴロ」を打つ事ではない
まず①の
『「叩く」という事が強い打球を生む』
ですが、
野球の指導では感覚的な言葉がよく使われます。
「上から叩け」「軸で回転する」などなど様々な
感覚的な指導が多いです。
ある程度指導経験を積み言える事は、
これらはあくまで感覚であって
実際の動作がそうなっているわけではありません。
多くの指導者がここを勘違いしています。
例えば、
「上から叩け」と指導したとします。
感覚では上から叩いていますが、
実際に上から叩いてないという事はよくあります。
この時にヒットやいい当たりが出ると
「ほら、上から叩いたから打てたんだよ」
と勘違いしてしまう事が多いです。
これは選手も同じです。
「感覚」と「実際」はズレがあります。
これを理解しておく事が第一です。
「感覚と実際のズレ」
は他の記事でも度々お話させて頂いています。
こちらの記事に詳しく書いてあります。
「できるコーチ」が当たり前にやっている野球指導方法
本当に叩いてしまってはバットの軌道は
ダウンスイングになります。
ボールの下側にバットが入りやすくなるため
むしろフライ(チップ系)が多くなります。
また、ボールとバットのコンタクトゾーンが
狭くなりますので実際に叩いてしまってダウンスイング
になってしまっては打つ確率がさがります。
たまたまそのような感覚で打って、
ヒットになったからと言ってそれを
「上から叩くのが正しい」
と認識してしまう事は長期的には大きな損失です。
ヒットを打つ確率もやがて低くなります。
実動作としてはやはりほぼフラットなスイングが望ましいため、
感覚と実際の区別をつける事が必要です。
(地面ではなくボールに対してフラットなスイング)
それらを理解した上で上から叩く感覚で
ヒットが打てているならそれは良いかと思います。
データー(セイバーメトリクス)から見る
「叩いてゴロを打て」が非合理的な理由
あるデータではフライとゴロの打率と
その長打率についてデーターが出ています。
フライとゴロの場合、打率に大きな差は出ませんが
長打率に大きな差がでます。
長打率が高ければ得点力も高くなります。
これもデータとして出ています。
また、「上から叩け」派の指導者の言い分として
「スピンがかかり良く飛ぶ」という事が言われます。
ですがこれも残念ながら
スピンよりも初速のスピードが重要な要素に
なっている事がわかっています。
上から叩くとスピンは確かに掛かりますが、
打球速度が低下します。
なので長打率が下がり結果、
得点力も低下します。
MLBのアスレチックスは2013年シーズンに
計測以降、フライの割合が多くなり、
実際にシーズン96勝をあげているそうです。
フライを打つ事でもちろんアウトにもなりますが、
それが長打率をあげ得点力をあげている証拠です。
こちらからそのデータが確認できます。
https://blog.nextbase.co.jp/?p=1271
出典元:NEXT BASE:【打撃特集1】上から叩くな!新しいスイング理論
相手側のエラーを誘う為ゴロは選手には意味がない
次に「相手側の守備エラーや送球エラーを誘う」
②③についてですが、
これは少年期でしか通用しない戦術です。
少年期の場合、当然すべての技量も発達段階の為
エラーやミスは多くなると思います。
なので、徹底してゴロを打つ事で
試合に勝つ確率はあがると思います。
特に少年野球の場合かなり高い確率で
盗塁も成功します。
なので長打を打っている状況と同じになります。
しかし、これは少年期やせいぜい中学野球でしか通用しません。
残念な事にそれを理由に
「私は高校でも通用する打ち方を教えているんです」
という指導者がいます。
もちろん様々な意見はあると思いますが、
・実際は叩いてしまっては打てない
・少年・中学野球ではゴロの方が都合がいい
という2点からも疑問が残りますし、
指導者の力量不足を隠す言い訳のように聞こえます。
当然高校生以上になってくれば個々の技量も上がってきます。
1試合でエラーは多くても2個前後くらいでしょう。
そんな中ゴロを打ち続けていたらどうでしょうか?
レベルの高いピッチャーはできるだけゴロを打たせようと
配球や組み立てをしてきます。
なぜかというと、
フライでのアウトはヒットや長打と
紙一重であるという事を知っているからです。
アウトでも積極的にバッターにスイングされると
ピッチャーは嫌なものでプレッシャーをかける事ができます。
自分のタイミングでスイングされる事をピッチャーは嫌います。
なのでできるだけ体勢を崩そうとゴロを打たすわけですね。
またそれが終盤になっての得点に繋がったります。
ゴロを打って欲しいのに、
自らゴロを打ってしまっては
プレッシャーを与える事はできません。
当然、守備力もあげっていますから
エラーやミスは期待ができません。
そうなるとピッチャーの思うツボです。
私(下)もピッチャーでしたが、
小さいころからゴロ打ちを徹底されてきた
バッターはすぐにわかります。
すごく小さくまとまったフォームなんですよね。
特有の「型」みたいなものがあります。
これではバッティング上達は見込めません。
そんなバッターを見たときは、
「よし。楽にいける」と心の中で思ったものです。
打たれても単打で済みますから恐怖心がないんですね。
なので②③も結局少年野球または中学野球程度でしか
通用しない事であり、
あたかもそれが正しいという指導者は大勢います。
長期的に見ればそれが、
スケールの小さい選手を育成してしまっている事に
気付かなくてはなりません。
「今勝つこと」が未来の最適化にはならない
以上の理由からも、
ゴロを打つ事が非合理的である事がわかったかと思います。
先々の選手の可能性をみれば、
今を最適化するより未来を最適化するべきだと
私たちは考えています。
「フライはあげるなー!!」
「ゴロ打てーー!エラーもあるだろー」
「しっかり叩けー!」
こういった常識的だった指導も見直す時期です。
野球人口が低迷している理由の一つに、
・指導者についていけない
があります。
野球に限った事ではないかもしれませんが、
こういった事からも見直すべきでしょう。
野球は他のスポーツと比べても
様々な運動能力や機能を使う必要があります。
低学年や小学生・中学生くらいの時期では
うまくできない事が多いです。
そういった事も踏まえて指導者は理解をしておくべきだと
思います。
中々すぐには上達しなくても、
しっかりと見守っていく。
困難な事に向かっていけるように
励まし、サポートしていく。
そんな事が求められているのではないでしょうか。
大切な選手たち、そして大好きな野球を守るためにも
今一度再考していきましょう!